おんたま倶楽部

読書感想文などを中心に書いていこうと思います

読書感想文 中島梓『タナトスの子供たち 過剰適応の生態学』 page 1

中島梓のアンビバレンス はじめに ふとしたきっかけから、私は「やおい」に関心を持ち、近ごろ関連書籍を読んでいる。その一環で、本書を手にした。この分野において、本書は主要な著作とみなされている。 その独特の文体のために、初めのうちは違和感しかな…

読書感想文 野火ノビタ(榎本ナリコ)『大人は判ってくれない』 page 3

(前回からの続き) ③「愛し愛される」関係性それ自体への欲望 やおい女子は、受けとして愛されることを欲するとともに、攻めとして愛することをも欲する、ということを見てきた。しかして、関係の項は二つしかないのだから、欲望の対象はこれで尽きているよ…

読書感想文 野火ノビタ(榎本ナリコ)『大人は判ってくれない』 page 2

(前回からの続き) ②「攻め」として「愛したい」という欲望 先に、やおい女子が受けのキャラクターに感情移入するとき、攻めのキャラクターは彼女にとって「抱かれたい男」なのだといった。だが、その反面、彼女たちはその攻めのキャラクターにも自己を投影…

読書感想文 野火ノビタ(榎本ナリコ)『大人は判ってくれない』 page 1

やおい女子の原点と三つの欲望 現実の性愛において、女が男に対して担わざるをえない「役割」を、野火氏は次のような式で記述している。 「愛する(犯す)男」 × 「愛される(犯される)女」としての「私」 女はどうやってもこの役割関係を覆すことができな…

読書感想文 永田希『積読が完全な読書術である』

積読のうしろめたさ この本の中で著者は、本を読まずに積むという行為には避けがたく「うしろめたさ」が伴うことを、再三にわたって強調している。読者に積読を勧める著者じしんが、そのことを痛切に実感しているのである。 著者いわく、積読のうしろめたさ…